クリスマスのストーリー「飼い葉桶の二人の赤ちゃん」
数年前、JESUSフィルム・プロジェクトが聖書に基づいた道徳と倫理のプログラムを作り旧ソ連の国々で教えることになりました。共産主義が崩壊し霊的に開かれた環境でした。キャンパスクルセードなど複数の伝道団体がスタッフを送り、学校や刑務所、孤児院でプログラムを教えることになりました。
この証の舞台は100人ほどの子供達が生活する大きな孤児院です。親から捨てられたり虐待された子供達がいる政府系の孤児院でした。この孤児院に派遣された2人のアメリカ人の話です。
クリスマスが近づき、子供達にイエスさま誕生のお話をすることになりました。子供達にとってはじめて聞くものでした。マリアとヨセフがベツレヘムに着き、宿屋に部屋がなく馬小屋でイエス様が生まれ飼い葉桶に寝かされたお話をしました。
子供たちとスタッフはお話に聞き入っていました。お話が終わると子供達に飼い葉桶をつくるための厚紙3枚をくばりました。また黄色の紙ナプキンを正方形に切ったものもくばりました。当時は旧ソ連には色紙がなかったのです。
指示にしたがって子供達は紙ナプキンを裂き、飼い葉桶に敷くわらをつくりました。正方形に切ったネル地の布がイエス様の毛布用にくばられました。これはロシアを離れるアメリカ人女性の着古したパジャマを切ったものでした。赤ちゃん用にはアメリカから持ってきた小麦色のフェルトから切り抜いた人形を配りました。
子供達のあいだを見て回るとどの子供も飼い葉桶を一所懸命つくっていました。6歳くらいの少年ミーシャのところで立ち止まりました。驚いたことにミーシャの飼い葉桶には赤ちゃんが二人いるではありませんか。わたしは通訳のスタッフを呼んでミーシャに何故赤ちゃんが二人いるのかたずねました。
ミーシャは腕を組んでイエスさま誕生のお話をしてくれました。一度しか聞いていないのに幼いミーシャは驚くほど正確にお話を覚えていました。マリアが幼子イエスを飼い葉桶に寝かせるところまではわたしたちが話したとおりでしたが、そのあとは違っていました。ミーシャは言いました。「マリアが赤ちゃんを飼い葉桶に寝かせると、イエスさまが僕をみて言ったんだ。『きみ、行くところはあるの?』って。」
「『僕にはお母さんもお父さんもいない、行くところがないんだ。』って言ったら、イエスさまが『一緒にいていいよ』と言ったんだ。でも僕は『ほかの人みたいにあげるプレゼントがないから無理だよ。』って返事したんだ。でも僕、どうしてもイエスさまと一緒にいたいと思ったから何かあげられるものはないかと考えた。もしかしてイエスさまは寒いんじゃないかな、暖かくしてあげたらプレゼントの代わりになるんじゃないかな、と思って言ったんだ。『暖かくしてあげたらプレゼントの代わりになるかな?』。イエスさまは『もちろんだよ。今までもらったプレゼントの中で最高のプレゼントだよ。』と言ってくれた。だから僕は飼い葉桶の中に入ったんだ。イエスさまは僕をみて『ずっと一緒にいていいよ』って言った。」
ミーシャの目には涙がいっぱい溜まり、話し終えるとテーブルに突っ伏して肩を震わせて泣き出してしまいました。
孤児であったミーシャは決して自分を捨てたり傷つけたりしない、ずっと一緒にいてくれる人を見つけたのです。ミーシャの話を聞いて人生で大切なのは、「何」を持っているかではなく「誰」が人生にいてくれるか、なのだということを学びました。
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